[副校長] 成蹊
成蹊
本校を受験したいと訪れる見学者が増えてきた。まだ生徒が下校する前の校内を案内する時は、在校生の明るい笑い声と落ち着いて生活している姿を見ることが出来る。その様子を見た見学者の多くが、来校時の緊張した表情から一転、安心した顔に変わる。生徒会が改装を手がけた図書室も、見学者には好評だ。いつ完成するか分からないほど原型をとどめていない作りかけのトイレにも、不思議なほど多くの見学者が感心してくれる。
本校は、派手な広報活動を一切していない。一般の方が目にすることが出来るものと言えば、スマホやパソコンで見ることの出来るホームページと、駅前にあるこぢんまりとした校舎、そしてそこで学ぶ生徒達だけである。見学者の多くは、ホームページや自分たちの地元から本校に通っている生徒の様子を知って見学に来るのだろう。さらには、見学した中学生や保護者が学校や職場や地域社会で本校を見学した感想を話し、その話を聞いた人が新たな見学者として本校を訪れてくれる。誰かの笑顔が別の誰かを呼んで来る。本校は今、まさにそんな状況になりつつあるのだ。
中国の故事に「桃李もの言わざれども、下自ら蹊(道)を成す」という言葉がある。これは、桃や李(スモモ)は何も言わないが、美しい花にひかれて人が集まり、その下には自然に道が出来る。つまり、徳のある人のもとへは、人が自然に集まることを意味する言葉である。美しい花を咲かすためには、大地にしっかりと太い根を張る事が必要だ。人もまた同じ。目立つことや格好をつけることばかりに時間を費やしても、真の信望は得られない。人から見えない部分をしっかりと育てる事が大切なのだ。高校生という年代は、まさに人間としての根っこを成長させる時期。それを忘れずに歩み続け登り続ければ、やがて美しい花が咲き他者から信頼される人となるのだ。そのような生き方をする者のみが、自らの前に幸せへと通じる一本の道が出来ると信じ生きて欲しいと願っている。
本校の2017年も、生徒・保護者と先生方のお陰で無事に終える事が出来そうである。来年も一層深く広く根を張って、生徒個々と学校が美しい花を咲かせる一年となる事を、心から願っている。
2017.12.20 伊坪 誠