[副校長] 南風

南風
5月も中旬、爽やかな金曜日。江ノ島・鎌倉を巡る校外学習が行われた。シーキャンドル(江ノ島の展望灯台)の絶景に歓声を上げる生徒たち。自由行動では、穏やかな波打ち際で裸足になって戯れる女子生徒のグループや江ノ電に揺られ仲間同士で鎌倉を散策する者達。歴史ある海沿いの街のあちらこちらで、生徒たちの明るい笑顔に出合った。

笑顔と云えば、先日の保護者会でも、笑顔が咲いた。こちらは生徒ではなく、保護者の方々の笑顔である。本校生徒の中には中学校時代に不登校だった者、入学した全日制高校を何らかの理由で転校・退学せざるを得なかった者が少なからずいる。その経験は保護者にとっても辛く厳しいもの。クラス懇談会で自らの体験を涙ながらに話す母親。そのひとつひとつに参加者が聞き入りまた涙。どの家庭にも同じように苦しんだ時期があるからこその、涙である。しかし各家庭のそれぞれの物語が、今は良い方向に向かい出している様である。「あんなに悩んだのが嘘のように、今は元気に登校している」「自分の道を見つけ、前に歩き始めました」など、最後には変わり始めた我が子の様子を、嬉しそうに話して帰る姿か多かった。

今、本校には風が吹き始めている。その風は生徒を穏やかに、そして元気にする風である。風の出所は、丁寧な指導を実践する教職員とそれを信じ支えてくれる保護者の一体感という暖かな空気から。子どもを信じ応援する空気は、生徒の心と体を包み育む南風となる。

良い風の影響か、今では生徒の半数以上が女子となった。彼女達の元気な声と優しい笑顔が、更なる良い風を運んでくれる。そんな次の季節が、本校にも近づいて来たようである。

本校の風に吹かれながら、傷を癒し元気になって、自分の足でしっかりと人生を歩む人となれ。

2017.5.22  副校長  伊坪 誠

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