[副校長] 伊坪の世界史 特別講義

『伊坪の世界史 特別講義』

いまからおよそ600年前、14世紀のヨーロッパでペスト(黒死病)という病気が流行した。この病気の致死率は30~60%。イタリアやイングランド(イギリス)では人口の8割が死亡し、全滅した街や村もあった。1列6人計6列の36人クラスに例えたら、生き残れたのはおよそ一列のみだから、その猛威は衝撃的だ。

世界史教師の私が長年使っていた山川出版の詳説世界史という教科書では、①ペストの流行に加え、気候変動による凶作や飢饉そして相次ぐ戦争により農業人口(当時の産業は農業が中心だった)が大きく減少したこと。②その事が後の社会的変化に大きく影響を及ぼした、という説明が約1ページにわたり記載されている。

世界史は成功と失敗のドラマ。教科書にはおよそ400ページにわたり、先人の勇気と苦悩の足跡が示されている。教壇に立っていた頃の私は授業でその物語を紡ぎながら、今を生き未来を築いて行くために必要な物の見方や考え方を生徒たちに養いたいと考えていた。

ペストが流行したヨーロッパについて授業をするとき、私は決まって次の話をした。

「この教科書全ページの中で、君たちに一番覚えておいて欲しいのが次の3行だ。ここ必ず試験に出すぞ!」

その3行とは・・・

『飢饉・疫病・戦乱による大量の死者が出て社会不安が増大した中世後期には、人びとが社会的少数派に対して不寛容になり、ユダヤ人(自分たちとは異なる暮らしや考え方をする人としての意味で紹介)などが激しく迫害された。』

 

新型コロナウイルスの流行、医療崩壊の危機、経済的に困窮する人びと、為政者どうしの対立・・・。どこか600年前の欧州と似てはいまいか? ならば、この先に来るものは・・・?

先人と同じ過ちは、御免である。

 

かつて伊坪の世界史を学んだ生徒達へ、そしてこのブログを読んでくれた皆さんへ

授業での問の答えが、今という時代の中で試されている。

~今を見つめ、未来を語ろう~

 

 

2020.4.21

 

霞ヶ関高等学校

副校長 伊坪 誠