少年時代」

変わった子供だった。落ち着きが無く、授業中はすぐに出歩いて先生を困らせた。注意されるまでは毎回教科書も開かずに授業を受けた。たまに開いた時には、魚や虫の絵ばかりを余白に描き続けた。授業中大人しくしているのは、きまって外の景色を眺めている時だ。風に揺れる梢の動きや流れる雲を観ているだけで、時が経つのを忘れてしまった。あれはたしか小学校2年生だったか。父親参観日で教室の後ろにはクラスじゅうの「お父さん」が並んでいた。にもかかわらず、一番後ろの座席で虫眼鏡のレンズを授業中ずっと磨いていた。帰宅してからの父親の形相は、虫眼鏡で観たカマキリの顔より怖かった。

そんな毎日なので、当然国語や算数は出来なかった。しかし、理科と社会だけは、なぜか授業を聞かなくても成績が良かった。日常の何気ないことを遊びに変換するのも得意だった。4年生になり戦国時代に興味が湧くと、「戦(いくさ)ごっこ」という遊びも考案した。参加者の銘銘が実在の戦国武将に扮して手刀で戦う遊びだ。戦略を練り部隊を率いて、作戦通りに敵を攻撃する。実際の歴史も研究して校庭じゅうを駆け回って遊ぶので、知識が増す上に体力もついた。クラス中がこの遊びに夢中になり、男女問わず一緒に遊んだ。この遊びは担任の先生も推奨してくれた。しかし合戦中に腕の骨を折った者が出たために、学校から禁止命令が出た。翌日、クラスの「戦国時代」はあっけなく幕を閉じた。

5年生になり、担任の先生が替わった。その先生は、毎日宿題を出した。宿題の内容は「毎日2ページ分のノートを作る」という事だった。教科や内容の指定は一切無い。漢字練習など好きなことをノートに記せば良いわけである。この宿題のお陰で、小学生になって以来初めて自分の机の前に座る習慣が身についた。マグカップにお気に入りの飲み物を入れ、秩父連山に沈んでいく夕陽を窓越しに眺める時間は、「ゆっくり」そして「じっくり」と物事を考える良い時間となった。宿題ノートには、そのとき感じた事などを散文的に書き綴った事も多々あった。その先生は6年生最期の通知表に、「心も体も成長しましたね」と所見を記してくれた。

今年もまた新年度が始まった。平成31年度と令和元年の新年度である。勉強や運動が好きな人も嫌いな人も、人間関係を上手く結べる人も結べない人も、みんな同じ新年度。不安なのは皆同じ。成長したいという願いだって皆同じ。急がずに焦らずに。諦めずに根気よく。一歩一歩・一段一段と、歩を前に進めよう。出逢いを大切に。ピンチをチャンスに。迷った時は勇気を出して。困った時も、最期の最期は笑っちゃえ。

学校は、そうやって少しずつ成長していくあなたの少年(少女)時代の成長の場所、思い出の場所になれることを願っている。

 

本校の合い言葉は「チェンジ、チャレンジ!」。

あなたたち一人一人がどんなチェンジとチャレンジの物語を作って行くのかを、楽しみにしていますね。

 

 

2019.4.11

霞ヶ関高等学校 副校長 伊坪 誠

(元 変わった子供)